ある日のこと。珍しく美桜菜が休みだった。
インフルエンザに罹ったらしく、しばらくお休みらしい。寂しいよぉ…。ワクチン打っとけよぉ…。
「おはよ、山下さん」
私がいくら返さないのを徹底しても、めげずに毎日声をかけてくる。
朝のHR5分前、
「山下さん?八女さん来ないね」
ほら、美桜菜の心配じゃん。
連絡でもして、聞けばいいのに。
「山下さん、なんか知らないの?んー、連絡先知らないから聞きようがないや」
連絡先知らないのか。そこは奥手?
「あ、連絡先といえば山下さん、俺とLINE交換しない?」
奥手でもなかった。遠回しに、美桜菜の連絡先教えろと。
私は机の中からスマホを出して、QRコードの読取画面にする。
「あ、いいの?やった」
瞬汰と出てきて、追加を押す。美桜菜の連絡先を送信して、スマホを机に戻す。
「Miona?…ああ、八女さんか。何で?」
何で???
いや、私とLINE交換したかったの、美桜菜のLINE知りたかったからでしょ?
「まあ、山下さん情報貰えるかもだから追加しとこ!」
なんだよ、山下さん情報って。嬉々として何言ってるんだこの人は。



