次の日の放課後。

美桜菜と遊びに行く約束をしていたのだけれど、先生に頼まれごとされていて、美桜菜を教室で待たせていた。トイレに寄ってから教室に向かうと、話し声が微かにする。

内容は聞こえないが、ちらっと覗くと…。

美桜菜と羽柴だ。

羽柴が美桜菜の手を、お祈りするみたいな形で握っている。

楽しそうに話しながら。


ほらね、言ったでしょ。

私は男にとって、美桜菜に近付くためのステップでしかない。

10%でも信じた私が馬鹿だった。

手を離した所を見計らって、


「美桜菜」


と呼ぶ。


「山下さん、おつかれさま」

「行こ、美桜菜」

「ちょっと浬沙?」


羽柴のことは完全に無視して、美桜菜の手を引いて教室を出た。


「何、今の」

「なに怒ってるの、浬沙」

「やっぱり美桜菜のこと狙ってるだけだったじゃん、羽柴の奴」

「え、何で?」

「羽柴が美桜菜の手握ってるの見てた」

「あれは…」

「あれは?」

「羽柴くんが話しかけてきたの。山下さんって可愛いよね!って」

「はい?」

「それで、私嬉しくて嬉しくて。やっと浬沙の可愛さを分かってくれる人が現れたか!って。うん!って言ったら、だよね!!って意気投合して手握られただけ」