寂しい姫と不器用王子



5月下旬。梅雨近くなって、蒸し暑くなってきた。


朝、学校に着いてからリュックを探っていると、鍵を忘れたことに気付く。

最悪、手持ちのスクールバッグから入れ替えた時に、鍵入れ忘れた。

姫莉と帰るか、姫莉の後に帰るかしないといけない。

連絡…と思ったが、毎日顔を合わせているせいで、連絡先を交換してないことに気付く。

学校で関わるなと言われたが仕方ない…。


1年生の階に行く。そういや組も知らない。まあ、群を抜いて可愛い顔立ちだから、すぐ分かるだろう。

1組、2組と順に見て回る。朝のHR前だから、教室にはいるだろう。

3組を覗くと、スマホを眺める姫莉がいる。窓際の席だったが、


「姫莉!」


と軽く呼びかけると、顔を上げて反応する。

でも、彼女は怪訝な顔をした。そりゃそうだ、1日目に学校で関わらないでと話をしたのだから。

しかも、目立ちたくない性格なのだろう、俺が呼んだせいで目線が少し集まってしまったのが不快らしい。


「何か用でもあった?」

「ごめん、来ちゃって」

「うん…」

「鍵忘れちゃってさ」

「家の?」

「そう、だから、一緒に帰れるかなと」

「そんなのスマホで…あ」


彼女も、連絡先交換してないことに気付いたのだろう。


「分かった、教室で待ってる」

「うん、ありがと」