「…他の男と何かあったのか知らないけど、俺は違うから。信用してよ」
とはいえまだ新学期が始まったばかり。寮にも入ってきたばかりだろう。ここで何かあったわけではなさそうだ。可愛い子だから、男とはなんかしらあるだろうな。決めつけは良くないけど。
「んっ」
姫莉に手をまた伸ばす。
目だけこちらに向けてくる。
やっと手を握ってくれる。嬉しかった。
ダブルベッドの端と端で横になって、ただ静かに寝た。
翌朝。
目を覚ますと、可愛らしい寝顔の姫莉がすやすや眠っている。
寝顔まで無敵か。
朝食を作ってしまおう。
典型的な朝ごはんを作り、制服に着替える。のんびりと姫莉が起きてくる。
「おはよう」
「おはようございます…」
寝癖がついているのもまた、無防備でいいなと思った。
同じ柄の制服で、同じ朝食を食べ、一緒に出る。
「一緒に出たらまずいか」
「そうですね」
「あとそうだ、鍵渡さなきゃな」
玄関の引き出しから鍵を取り出して渡す。
「じゃあ、先に行きなよ」
「行ってきます」
学校でまた見かけるだろうけど。



