翌朝目覚めると、俺の腕の中に姫莉がいる。


「ひまっ…!」

「んっ…何…」


驚いて大声を上げたために、目を開けた姫莉は、自分が置かれた現状に気付いて俺を突き飛ばしてきた。


「いってぇ!」

「びっくりした!」


姫莉は寝室を出て行ってしまった。


「なんだよ…」


嬉しかったのに…。


まだ咳は残っていたが、登校することにしたようだ。
朝の添い寝事件のせいで、姫莉とギクシャクしているが、まあすぐ元通りだろう。


7月下旬。

近所の河川敷で花火大会があると知る。
そういや、2人で出かけたことないな、と思い夕飯の時に誘うことにした。


「なあ、姫莉?」

「ん」

「今週末、花火大会あるんだって。2人ででかけたことないし、デート…しない?」


あえて、デートと強調してみた。好きだ、とは言った。だけどあの日以来、姫莉からそれらしい言動は全くない。


「いいよー、デートかは分からないけど。付き合ってるわけではないし」


俺は固まる。ん、覚えてらっしゃらない?
あれ、俺言ったよね、好きだって。泣いてて覚えてないとかいうオチ?


「付き合ってないと、デートじゃない?」

「デートの定義調べようか?」

「いやいいです、なんでもないです」