寂しい姫と不器用王子



姫莉はわんわん泣き出してしまった。


「姫莉…?」

「もう行ってよ…!」

「俺が、姫莉のこと置いて、どっか行くほど冷たい人間だと思う?」


その時、昼休み終了のチャイムが鳴る。


「もう皆教室入ったし、誰にも見られないよ。保健室行こう?ね?」


泣き止み始めた姫莉は、小さく頷いた。

手を繋いで、保健室に向かった。


「あら!どうしたの?」

「なんか裏庭で女子生徒にいじめられてたみたいで」

「バケツで水でもかけられた?」


姫莉は頷いた。先生に色々聞かれ、彼女は小さく答え続けていた。話を聞いていると、水をかけてきた奴らは、同じクラスの女子達らしい。

俺も姫莉もジャージは持って来ていなかったため、早退することにした。俺も心配だったためついて帰ることにした。幸い、気温が高くて制服は割と乾いてきた。

ちゃっかり手を繋いで帰ってきた。姫莉は抵抗する様子は無い。


「ほら、シャワー浴びて身体温めてきな」

「うん…」


それにしても…何故黙っていたんだ、いじめられていたこと。助けてって言ってほしかった。何か助けになれれば、なったのに。

さっぱりして出てきた姫莉は、自分で制服を乾かそうとしていた。


「いいよ、貸して。俺乾かすから」

「自分でやれる」

「いいから、横になってな」

「ありがとう」