寂しい姫と不器用王子


数日後。

友人と駄弁りながら裏庭を見ていた。女子3人と、姫莉。なんだか3対1の構図に見える。ここは3階だから、声までは届かないが、何となく嫌な予感がする。


「どうした、駿。急に黙って」

「いや、あれ」

「ん?可愛い子でもいた?」


可愛い子に間違いはないが、もっと危機的な話。

1人が、急にバケツを掲げたと思ったら、姫莉にぶっかけた。

いきなりのことで驚いて固まってしまった。


「えっ?はっ?」

「いじめ現場じゃん、 え?生々しいんだけど…っておい、どこ行くんだよおい!」


俺は気付いたら走り出していた。


「何してんだよ!」

「うわやば、見られてた」

「おい逃げんなっ」


女子3人は逃げてしまった。


「姫莉?保健室行こ」


へたりこんでいる姫莉に、屈んで声をかけた。


「いい、やだっ、見ないで、いいからっ」


過呼吸気味に、そう言っていた。


「姫莉…?」

「もういいから行って!」

「濡れたままじゃ風邪引くでしょ。今日ジャージ…」

「いいから!もう!」


そんなこと言われたって、放っておけるわけがない。


「姫莉」


保健室に連れて行こうと、手を掴むと、


「やめて!」


と強い力で振り解かれる。