「勇気が無かった…断られるのが怖かった。私と違って涼くんは人気者だから。1度他の人と遊ぶからとかって断られたら、もう会えない気がして。それに、私別に面白い人間じゃないし、一緒にいて楽しいのかなって、思っちゃって。会いたいって言っておいて、楽しい時間提供できないの申し訳ないなって思ってたら、会いたいって言えなくなっちゃってた」
今まで、会いたいと言えなかった本音を零すと、涼くんは
「しょうがない子だな」
と言う。
「本当は、会いたかった?」
「…いっぱいぎゅーしたかった」
「キスは?」
「キスも」
「うん」
私を横から優しく抱き締めてくる。
頬に軽くチュッとし、唇にも同様にチュッとしてくる。
「片付け終わった頃に、また迎えに来る」
「うん」
私から離れて、茜部先輩に目を向ける。
「で、先輩はどうしますかね」
「ふっ、悪かったよ。俺もう、付け入る隙ないわ。はいはい引きますよー。胡桃のクラスには、保健室で休んでるって伝えとくわ、無理すんなよ」
そう言って先輩は保健室を後にする。
「逃げられた…」



