「茜部先輩…何するんですか?」
涼くんの声がする。どうやら私は今、茜部先輩にお姫様抱っこされてるらしい。
「保健室、どうせ在校生いないと入れないし」
「だからって、琴葉のことお姫様抱っこする必要ないじゃないですか」
「…お前は用無しってことだよ」
そう茜部先輩は言って、歩き出した。保健室に着くと、両手が塞がっている先輩は足で無理矢理ドアを開けて、ベッドに私を寝かせる。靴まで脱がせてくれる。
やっとなんとか視界が鮮明になってくる。
「肝心な先生はいないのかよ…」
保健室内の冷蔵庫を開ける音がする。
「おい、起き上がれるか?スポドリ飲んだ方がいい。胡桃、どうせ忙しくしてたり、彼氏とうきうきで、ろくに水分摂ってなかったんだろ」
「よく分かりますね」
渡されたスポーツドリンクを口にする。
先輩は、ベッドの縁に座る。
「どんだけお前のこと見てると思ってんの」
「…?週に1回?」
「そうだけどそうじゃなくて」
よく分からなかった。
「胡桃が好きだから」
「へ…」
いや…え?
気付けば、茜部先輩の唇と私の唇が重なっていた。
頭が回らない。



