心-ココロ-



なんだかんだ楽しかった。

先輩の好きな子も、勿体無いなぁ。

早く茜部先輩の魅力に気付けばいいのに。


夏休み前最後の当番の日。

冷房が効いた涼しい図書室で、放課後の受付をする。

17時半になって、帰ることになる。

全然明るいのに、茜部先輩は相変わらず家まで送ってくれる。


「外あっちぃ…図書室快適すぎんだろ…」

「ですね…」


いつも通り歩いていると、後ろから


「琴葉!」


と聞き慣れた声と、駆ける足音が聞こえる。

立ち止まり振り返ると、やっぱりそうだ、涼くんだ。

つい最近、ゴールデンレトリバーみたいな金髪になって、直視できない事件が再発したところだ。


「涼くん、帰りこんな遅いの珍し…」

「誰だよ、この男!」

「え?」

「誰?!」


ちらりと茜部先輩を見ると、冷めた目で涼くんを眺めていた。


「ねえ!答えてよ!」

「図書委員の先輩」

「水曜日の、ペアの?」

「そうだけど…何?」

「何じゃないよ、俺聞いてないよ?ペアの人が先輩ってことしか聞いてない。普通言うでしょ、彼氏に。しかも毎週毎週送ってもらってるなんて聞いてないし!」

「あー…」