特に話すわけでもないから、気まずいんだけどな…。
怖いのか、優しいのか、まあ多分不器用なだけで根は優しいんだろうな、茜部先輩。態度で損してる。
ポケットに手を入れて、私の横を歩く。
愛想が良ければ、涼くんと一緒でアイドル級のイケメンではある。なんなら身長同じくらいじゃないかな。
「何?」
少し怪訝そうに私を見下ろす。
「えっ」
「俺の顔になんかついてる?」
「いや、なんでもないです」
そんなジロジロ見てたか。反省反省。
「家ここです」
「ん、じゃ」
「お疲れ様です。ありがとうございました」
「おつかれ」
そう言って来た道を戻って行く。
え…家こっちじゃないの?
「先輩」
「何」
「家こっちの方じゃないんですか?」
「電車通学だけど」
「これからは送ってもらわなくても、大丈夫です」
茜部先輩は目線を逸らして溜め息をついた。
「毎週送る。なんかあってから後悔したくない」
「いや、でも…」
「年上の言うこと聞けないわけ?」
そう言われると困る。下を向いて困っていると、
「異論は認めない。じゃあ、おつかれ」
そう言って帰ってしまった。



