涼くんが引き止めてきた。
「ん?」
「ごめん、まだ、帰したくない…」
顔を少し伏せて、涼くんが言ってくる。
「涼くん?」
「いや、なんていうか…」
歯切れが悪い。
「抱き締めたい」
私は固まってしまった。
本日オーバーキル2回目。
ド直球で毎度毎度やられてる。
「いい?」
「え…あ…」
「ダメって言っても無理、我慢できない」
そう言って、私の方に近付いて抱き締めてきた。
私の腕は宙ぶらりん。ビックリして動けない。
「好きだよ、琴葉」
いつもより落ち着いた声で、耳元に近い所で言ってくる。抱き締める力が少し強くなる。私も軽く腕を回す。
香水とかじゃない、わざとらしくない良い香りが私を優しく包む。とても落ち着く。
「何分抱き締めてたって足りないよ、どうしたらいい?」
「どうしたらいいんだろうね」
「やばい、好きが止まんない」
壊れそうなくらい力強く抱き締めてきた。
2人だけの世界に感じた。そうであってほしいと願った。誰も邪魔しないで…。
少しして、涼くんは離れる。
「じゃあ、またね」
「うん、またね」
寂しげな涼くんの顔が、頭にこびりついて離れなかった。



