新学期のがやがやした教室で。

隣の席で男子達が騒いでいて、居心地が悪い。


「大丈夫?顔色悪いよ」


反対隣の男子が話しかけてきた。


「桜庭涼、君は?」

「胡桃…琴葉」

「琴葉、よろしくね」


彼は、喧騒から少し気を逸らしてくれた。

男子が苦手だったけど、彼には心を開くことができた。


中学を卒業する頃には、私は彼に恋愛感情を抱いていた。高校は別になる。友達のままでいられるのか、不安だった。

中学の卒業式が終わってから。私は意を決して、涼くんを校庭の端に呼び出した。


「あのね、涼くん」

「改まってどうしたの?」

「ボタン、欲しいの」

「ボタン?」

「涼くんの、ブレザーのボタン」

「これ、譲渡するからあげられな…ん」


彼は私の意図に気付いたのか、顔を赤らめる。


「そういうこと?」

「高校、離れるから…涼くんと関係途絶えるの怖くて。好き…なのに、離れたらやだよ…」


勇気を振り絞ってそう伝えた。


「ごめん」

「え…」

「琴葉から言わせてごめん。俺も、琴葉のこと好きだよ。結構前から」


泣きそうになる。


「ボタンはあげられないけど、俺の気持ち、受け取ってくれる?」

「勿論…!」

「やだなぁ、泣かないでよ」


涼くんは頭をぽんぽんと撫でる。


「帰ろっか」

「うん!」