私は、適当に町を歩く。街を歩いてると、『文房具屋』と書かれた看板の付いた老舗を発見して、古いドアを開けて中に入った。

「……いらっしゃい。可愛らしいお客さんだね」

カウンターに座ってる綺麗な白髪のおばあさんが、私を見て微笑む。私は、微笑み返してから並んでいる文房具を眺めた。文房具を手に取っては、試し書きをして、返しての繰り返し。

「……へぇ、お姉ちゃん……絵、上手いね」

私が描いた落書きを見つめ、おばあさんは言う。

「そうですか?……私、イラストレーターとして活動してますし……」

そう。私は、イラストレーター。ラナって名前で活動してるんだ。そう答えると、おばあさんは一瞬だけ不思議そうな顔をしたような気がした。

「……そうかい。じゃあ、この筆ペンをあげるよ」

おばあさんは、ローブのような服のポケットから、1本の筆ペンを取り出して、私に差し出す。

「お金なんて要らないから」

「え?良いんですか?」

「良いよ。これ、もらい物でさ。わしは、使わないし……」

「……ありがとうございます!」

ニコリと笑ったおばあさんに、お礼を言ってから筆ペンを受け取った。……これの他に、特に良いのは無いかな?

「……私は、そろそろ帰りますね」