「そっか…そっかぁ!まだ、奈々ちゃんにはまだ恐怖が足りないんだね。なら一回、──死んでみる?」
「へ?」
──バンッ!
次の瞬間、体に衝撃が走る。
私は橋の下の川へと突き飛ばされていたのだ。
「きゃぁぁぁぁぁあ!」
そのまま重力にしたがって落下した。
距離は長い橋だが、高さはそんなにあるわけではない。
浅すぎず、深すぎずといった感じで、落下して体を岩などに打ち付けられるという心配もないだろう。
「やっ!たす…たすけっ、て…っ!」
ただ1つ、私はカナヅチだった。
昔海で遊んでいたときに、足を攣ってしまい溺れかけたことがあった。
たまたま通りかかった人が助けてくれたけど、暗い海に沈んでいく感覚を今でも、はっきりと覚えていた。
背に腹は替えられず、突き落とした本人である先輩に助けを求めた。
だけど、顔を青くさせて見ているだけ。
きっと、私がこんな川で取り乱して溺れるなんて予想していなかったのだろう。
「ぼ、僕は知らないっ!」
しまいには、そんなことをいい捨ててどこかへ走り去ってしまった。
私は思った。
