「…っはぁ。思ったより強いんだね。」
「…そりゃぁ、父直々に教えてくれたので。」
もう一度振り払おうと試みる。
が、それをすることはできなかった。
焦りを感じ始めた私を見て、先輩はクスクスと笑いだした。
「…何なんですか?」
「や、確かに女の子としては強いね。でも、これでも僕、男だよ?あれは不意打ちをくらっただけ。」
そう言って、両手を橋の手すりに押し付けられてしまった。
びくともしなかった。
──ここからでも叫べば、外にいる人に少しくらいは聞こえるかもしれないっ!
そう思い、声を出そうとしたが思ったように出ない。
出るのは掠れた小さな声だけ。
「あれ?怖くて声出ないのかなぁ?かわいいね。ね、早く僕のものになって?」
そう、顔を近づけながら囁いてきた。
全身に鳥肌が立つ。
「いっ、や…だっ!」
絞り出した声で否定し、慌ててキスされないように顔をそむけた。
すると、先輩はそのまましばらく固まってしまっていた。
恐る恐る、顔をのぞき込んでみると、見たこともないような冷たい目をしていた。
