先輩が声を発するよりも速く、足を踏みつけて腕を回して振り払った。
そして、手に持っていた部活専用のカバンを思いっ切り投げつけて走った。
──そう。
私はパパから護身術を教わっていたのだ。
ほとんどの日は空手を習っていたくろと一緒に登下校しているし、家族公認の彼氏であるためパパも安心して私の護衛を任せていた。
でも、高校生になってくろはバイトを始めたので、一緒に帰れない日もあった。
高校と私の家はそこそこ遠い距離にあった。
それを徒歩で通っているので、心配性なパパは私に護身術を自ら教えこんだのだ。
ママいわく、パパは学生時代ものすごく強かったらしい。
何でも、ママの敵を倒してくれたヒーロなのだそう。
詳しいことは聞いてないけど…。
そんなパパに教えこまれた私は、同級生の女の子よりは強いだろう。
橋は結構長い。
所属は運動部だが、マネージャーをしている私の体力では長く、速く走り続けれるわけがなく…。
3分の1を渡った所らへんでまた腕を掴まれてしまった。
しかも、さっきよりも断然強い力で掴まれているため、痛い。
その痛さに、思わず顔をしかめる。
