「んー、やっぱりつけられてる気がする…。」



暗い道を一人で歩いている私は呟いた。


今日は部活があって、さらにその後塾に行っていたため、時刻は22時を過ぎていた。


自分が足を速めれば一緒に速まり、緩めれば一緒に緩まる足音に、心拍が上がる。

吐く息も白く、カイロを握りしめているはずの手は、指先から冷たくなっていった。


私は慌てて制服のスカートに入れていたスマホを取り出す。

そして、ある人に電話をかけた。



「──…もしもし、奈々?電話なんて珍しいじゃん、どうしたの?」



彼の声を聞いて、どこが落ち着きを取り戻した。

ゆっくり呼吸を整えて、今の状況を伝えた。



「…あのね、くろ。今、塾の帰り道なんだけど誰かにつけられている気がするの…。」

「はぁ!?今どこ、どのあたり!?」



くろこと、黒瀬 望(クロセ ノゾム)は声を荒げた。


今までに聞いたことがないような声で叫ぶから、思わずスマホを耳から少し離してしまった。



「えっと…橋の手前!どうぶつ公園の近くの大きいやつの。」

「結構距離あるな…。奈々、今から行くから電話はこのまま繋いどけ!橋を渡ったら1番近いコンビニに入るんだ。いいな?」

「わ、わかった…。」



電話をつなげたまま、今度は制服の胸ポケットにスマホをしまった。


もう一度歩く速度を上げると、やっぱり後ろの足音も速くなった。