私は失礼しますと声をかけてから、先輩の教室に入り、悠真先輩の前まで行く。
周りの先輩は何事だと見ているけれど、そんなの気にしない。
「悠真先輩っ、見てください」
私は、悠真先輩に先程返ってきた解答用紙を見せつける。
いきなり現れた私にびっくりした様子もない悠真先輩は、きっと私が来ることを予想していたのかもしれない。
冷静なまま私の解答用紙を見ると、ふっと表情が緩んだ。
「頑張ったな」
その瞬間、クラスがシーンとなった。
(えっ?今、松木が笑った?)
(というか、褒めてなかった?)
どうやら、クラスメイトにとっても、悠真先輩のこの姿は珍しいらしい。
私は前から知っていたけれど、嬉しくならないはずがない。
ふにゃっと表情が崩れた。
「でも、俺が教えたのにこの点数か......」
「......」
うん、この一言は聞こえなかったことにしよう。
せっかく嬉しくなったのだから、このままでいさせて欲しい。