反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

「リュートさん、水ガメ全部水いっぱいにしてください。それから、ご主人はお時間ありますか?」
「時間?食堂の営業の下ごしらえはあるが、あとは煮込みと掃除くらいだな」
 よし!よし!
「じゃぁ、大丈夫ですね!」
 アンナさんの部屋に飛び込み、ヨリトを背負う。

「アンナさん、泣いたら連れてきますね!無理せず横になっていて!」
 それからおんぶ紐を受け取り、双子ちゃんの一人を連れていく。
「ご主人、背負ってください」
「あ、ああ」
 調理中は火や刃物もあって危険だろう。でもあとは煮込んでいる鍋を焦げ付かないようにかき混ぜるだけなら大丈夫だ。
 おむつのたらいと洗濯用のたらいと、なんかいろいろ裏庭に運び込む。
「洗濯、ここでしましょう!」
「え?」
 ご主人が驚いた顔をしている。
「何も洗濯場にこだわることはないと思うんです。水があればどこだって洗濯なんてできますよ。少し排水に気を付けないといけませんが……」
 ご主人があっけにとられた顔をしている。
 なぜ俺が洗濯などしなくちゃならないと言われればそれまでだけど。
 返事をしばらく待つ。
「そうか、そうだな。洗濯、ここだってできるか。俺が水を運びさえすれば、アンナも遠くまで洗濯しに行かなくてもいいし、子供を寝かせて、洗濯中に泣き声が聞こえたら部屋に戻ればいいんだよな……」
 え?アンナさんに洗濯させる話?
「それに、ここなら、誰に気兼ねすることなく洗濯ができるな」
 にぃっとご主人が笑って見せた。
 てなわけで、早速みずがめから水を運び洗濯開始。
 しかし、ため込んだおむつの汚れを落とすのはなかなか骨が折れる。
 ……石鹸ほしいですよね。石鹸がないなら、重曹とか……も、あるわけないし。ないよね?
 あ、逆に日本だと手に入りにくいけど、ここならすごく簡単に手に入る物がある。江戸時代には洗濯に使っていたと聞いたことがある。
「かまどの灰はどうしてますか?」
「庭にまくか、たまったら森にまきに行くかだな」
 処分してるんだ。農業とかには使ってないのか。と、今はそれはどうでもいい。
「あります?」
 ご主人は、庭の隅に視線を向けた。
 バケツがおいてある。雨水だろうか。灰の上に水がたまっていて、これならすぐに使えそうだ。
 ガチャガチャとかき混ぜ、灰が沈んだら上澄みの液を洗濯桶に入れる。