反逆の聖女は癒さない~赤ちゃん育てるのに忙しいので~

「あっ何をするんですかっ!」
 院長先生が悲しそうな目を私に向ける。
 なぜ、悲しむの?
「あなたも、苦しむだけです……心優しいあなたが、傷つく必要はありません……お願いです、あの子たちにはかかわらないで……」
 私が、苦しむ?
 ますます意味が分からない。
 白魔導士姿の白ちゃんが、黒服の女性とともに院長室に駆け込んできた。またもやノックも何もなく、いきなりドアが開く。
「院長先生、空を……」
 空?
 言われて、窓から空を見る。
「あああ、何てこと……」
 院長先生が、窓に張り付いて驚愕している。
 空には、オーロラのようなものが立ち上っていた。
 横に広がるのではない。地面から空に向けてオーロラが突き立っているように見える。
 昼間なのに、ゆらゆらと揺れるそれははっきりと見えた。
「まさか、あれは……」
 白ちゃんも空を見て驚きの声を上げている。
「鬼の子が生まれた……」
 白ちゃんのつぶやきに、院長先生が再び涙を落とす。
「ああ、あああ、何てこと、何てこと。あの子たちは大人になれなかった。ファルーカ、ナルゴ、チャーダ、タエナを……特別室に移動させてちょうだい」
 黒服の女性に院長が命じる。
 院長が名前を挙げたのは、14歳の子供たちだ。あと少しで成人して孤児院を出ていく予定の子供たち。
「大人になれなかったって、どういうことなのですかっ!」
 あと少しで成人する。大人になるのに、なれないってどういうこと?
「知らない方がいいと、言ったでしょう。帰りなさい……」
 帰れと言われても、空に立ち上がるあのオーロラのように揺らめく影は……きれいだなんてとても思えない不穏さを感じさせるし、鬼とか大人になれないとか……不吉な予感しかなくて。
 知らない方がいいって言われたって、知らないままでは逆に……。
「教えてください!教えてくれるまで帰りませんっ!」
 と、食い下がると、院長先生の何かが切れた。

「あなたのせいよ、あなたのせいで……あの子たちは、これから血を抜かれ、毒を盛られるのっ!あんなに太ってしまったから……あんなに太ってしまったから」
 え?
 血を抜く?毒を盛られる?
「鬼の子は成長するために人の子を食べるのよ……」
 鬼の子が、人の子を食べる?