「先生。今夜 少し お時間を頂けますか?」

午後の診察が 始まる前に 亜紀子は 駿平に言った。


「いいよ。久しぶりに 食事でもする?」

「うーん。ここでいいですよ?」

真美との会話を 盗み聞きしていた駿平は

亜紀子の 気配りを 真美の為だと思った。


「真美に 気を使っているの?」

「ううん。そうじゃなくて…」

珍しく 亜紀子は 歯切れが悪い。


だいたい 駿平は 亜紀子に誘われたことも

自分と真美のことだと 勘違いしていたから。


「大西先生に 悪いから…」

恥ずかしそうに 俯く亜紀子に

駿平は ハッとして 聞き返す。


「話って 大西先生のことなの?」

亜紀子は 当然だと言う顔で 頷いた。