さっきまで泣いてた雪姫が歩きながら俺と目が合って、心なしか喜んでるように微笑む。
冬の寒さとは裏腹に俺と雪姫の周りだけ春なのは自覚してる。
手を取り合って他愛のない話で来た道を戻る。
いつものコンビニの交差点。
学校方面でなく、駅前方面に行こうと信号待ちをしていたら雪姫を呼ぶ声がした。
「海人…」
名前を呼ばれてそっちを見た雪姫が呟いた。
無意識に雪姫を庇うように雪姫の前に立つ。
近付いた海人は、俺の腕をチラリと見た。
「こんな時間に何処に行くんだ?」
海人は俺に向かって言うが、その目は今までの海人とは違っていた。
言葉も苛つく感じでなく、本当に雪姫を心配してるかのような話し方。
「……駅ビルだ。雪姫の大事な物が壊れたんだよ。明日使いたいと言うから今から見てくる」
つられて俺も冷静になって話した。
「そうか……。ちゃんと雪姫を家まで送れよ」
「言われなくてもそのつもりだよ」
「雪姫もコイツに何かされたらすぐ言えよ」
軽く笑いながら雪姫の頭を撫でる海人。
その雰囲気が雪姫にもわかったのか、からかうような海人の言葉に柔らかい笑みを浮かべて一言返した。
「うん。わかった」
返事をした雪姫を見て気付く。
いつのまにか俺の腕の服を掴んでた雪姫。
それで、あの日の陸人さんの言葉を思い出した。
"素の雪姫が頼る相手にはなれなかった"
………さっき海人が俺の腕を見たのはそういう事なのかな。
雪姫の誕生日以後、海人に全然会わなかった。
結局海人は誕生日の日に雪姫と直接話すことはなかった。
陸人さん、空人同様に、こいつはこいつなりに雪姫が好きで大事に思ってきたのが、今わかった。
まだ何も分からなかった幼稚園時代。
俺とこいつは仲が良かったらしいが、今ならそれもわかる気がした。


