嶋村くんはそのまま手綱で馬を操る。
いきなり動きだして ぐらついた瞬間、すかさず嶋村くんの左腕で支えられた。
「大丈夫?」
聞かれた言葉に頷いて返事をする。
……大丈夫なわけない
この状況が大丈夫じゃないっ
腰を抱く腕が大丈夫じゃないっ
奏波が見たら大丈夫じゃなくなるっ
早く下ろしてくれないと色々大丈夫じゃなくなるっっ
「ちょっと、なんで嶋村が雪姫を乗せてるの?」
近付いてきた奏波が文句言う。
「無理やり乗せたわけじゃないよ」
軽く笑った感じに聞こえる声。
近すぎる位置からの声は、いちいち嶋村くんの存在を意識させる。
「正騎ずるい。俺も雪姫とそれやりたい」
「やっと馬に乗れてるあんたには無理よ。それより、雪姫が一緒なら外のコース周ろうよ♪」
私と嶋村くんを見て喜々とした奏波がオーナーのほうに駆けていく。
……まさか、このまま!?
これ、なんの拷問っ!?


