「斎藤?もしかして気分悪い?」 頭上から聞こえる声に思わずピクリと反応する。 「大丈夫。少ししたら勝手に休むから」 顔を見ることが出来ずに俯いたまま可愛げの無い返事をする。 ザッと嶋村くんが馬から降りた気配を感じたところで頭に湿った荒い鼻息がかかった。 思わず顔を上げると、嶋村くんの馬が柵の間から顔を出して鼻先を寄せてきた。 「馬は人の感情を読み取るんだよ。心配してるみたいだね」 ……馬にまで心配されるなんて……。 「この仔、優しいんだね」 大人しい馬の鼻筋を撫でながら呟いた。