嶋村くんがふっと笑った。
「大丈夫。俺も空人が夜中に抜け出さないように見張ってるから。今回は奏波嬢のわがままに付き合ってやろう」
楽しげに話しかけられた。
同じクラスになって初めて話しかけられた。
なのに。
……空人が抜け出す?
……奏波嬢って名前呼び?
一瞬で頭が真っ白になった。
「……わかった。奏波、もう怒ってないから」
頑張って笑顔を作った。
「……着くまで寝てていい?あんまり寝てなかったから」
そう言ったら奏波は笑顔で「うん!じゃあこれ使って」と大きめの膝掛けを出してくれた。
膝掛けを肩から掛けて窓におでこをつけて寝たフリをした。
今はただ、突然の失恋を必死で隠した。


