「あれ?結それとったの?」
渚先輩が“それ”と言ったのは、結さんが抱いているぬいぐるみのことだ。
それを聞かれた結さんは、嬉しそうに笑う。
「海くんがとってくれたのよ、可愛いでしょう?」
「かわいいね」
渚先輩に可愛いと言われた結さんは自分のことのように嬉しそうにしていた。
よっぽど嬉しかったんだな。
「皆でプリクラ撮らない?」
結さんが指さしたのはプリクラと言われる、写真を撮るもの。
写真は得意じゃないけど、皆もう向かい始めてるから、私も後を追った。
お金を入れて中に入ると、結さんが私の手を優しく掴んで、立つ位置を教えてくれた。
…結さん慣れてるんだな
私は1度も撮ったことがないから、何がなんだか分からない。
3、2…
あれ?これどこ見るの?
1!
_パシャッ
キョロキョロしている間にシャッター音が鳴って、
画面に表示された写真は、カメラ目線の皆と、そっぽを向いている私。
「…ふふっ…心花ちゃんどこ見てるの?」
結さんが笑いを堪えながら言った。
…私もどこ見てるのか分かりません
3、2…
もう次?!
_パシャッ
結局あっという間に撮影は終わり、きっと私はほとんど、どこを向いているのか分からないものばかりだろう。
落書きをするらしいけど、私は下手くそだから外で待機。
ちなみに渚先輩も。
渚先輩は多分、下手くそだからという理由ではなく、譲ったと言った方が正解だろう。
…渚先輩の絵は見たことがないけど、文字はいつも見てる
渚先輩の字はとてもきれいだ。
私はきっとあっちこっち向いてたり、もしくは半目だろう。
いつも写真を撮られると、目を閉じていたりろくなことがない。
今まで、何かの行事の集合写真で、目が開いていた写真なんてないんじゃないかってくらい。
けどまぁ、結さんや皆が楽しそうだったからいいか。
「…大丈夫?疲れてない?」



