「あら、渚がナンパされてる」
いつの間にか私の隣に結さんがいて、のんきにそう言った。
なるほど。
あれをナンパと呼ぶんですね。
「そうですね、私ちょっと行ってきます」
なんか困ってそうだし。
というか、あんなの無視すればいいのに。
やっぱり先輩は真面目だな。
「あの、彼女とかっているんですか?」
「私とかどうですか?」
先輩に彼女なんかいるわけないじゃないですか。
仕事大好き人間なのに。
「いないよ、」
…ほら
「でも好きな人がいるから、ごめんね」
そう言うと、女の子たちの輪からひとり抜けて歩いてきた渚先輩。
歩いている途中で私に気がついたのか、嬉しそうな顔をする先輩。
「迎えに来てくれたの?」
…好きな人、いるんだ
ふーん。
仕事大好き人間だから、いないと思っていた。
「必要なかったですね」
私はそう言うと渚先輩より先に歩き出す。
「ううん、嬉しい。ありがとう」
後ろからそんな言葉が聞こえて、私は小さくため息をついた。
さっきの女子には見せない顔を、私は知っている。
どこも怪我なんてしてないのに、
チクリと痛い。
どうして?



