ぐーっとおしてみるけど、しっかり抱きしめられてるからぴくりとも動かない。
私の力ではどうすることもできないのだ。
…枕と間違えてるんですか
「…せんぱい、せんぱい」
皆を起こさないように、先輩の耳元でそう呼びかけるけど、起きる気配はない。
「先輩ってば、」
離してくれないと困る。
「んん…」
あ、起きた?
離してくれないと、暑い。
「…暑いです」
起きたと思って話しかけたけど、先輩は目を閉じたままだ。
これ…起きないパターンなのでは…?
そのとき、やっと先輩の目がパチッと開いた。
あ、おき…
「……一緒にねよ?」
そう言って、へにゃりと笑う先輩。
…寝ぼけとる
それだけ言うと、また目を閉じて気持ち良さそうに眠ってしまった。
だから離してくださいってば…
私は結構大きなため息をはいた。
…もう諦めた
もういいや。
そう思い、先輩の腕の中で私も目を閉じた。
誰かの腕の中はとても久しぶりで、懐かしい温もりだった。
渚先輩の寝息がすぐ近くで聞こえる。
渚先輩の心臓の音が聞こえる。
…やっぱり…暑いです



