……全部アドリブだ
初めから準備していた言葉なんかじゃない。
先輩のことだから、今思ったことをそのまま口にしたのだろう。
「ううっ…生徒会長のせいで涙とまらなくなったーっ」
「あれはずるいよ~」
「なぎさーーっ、ありがとなぁーーっ」
「みんなのこと見ててくれて、嬉しいね…」
「ほんと、あったかいよね…」
拍手がワッと大きく鳴った。
涙ながらに肩を組んだり、写真を撮ったり、
そういうのを見て、少しだけ分かった気がした。
この人達も、渚先輩と同じように今年で体育祭が最後なんだ。
そしてダンスパフォーマンスをするのも、今年で最後。
渚先輩のアナウンスで涙を流した人がたくさんいる。
…先輩はくそ真面目だけど、
それは人を笑顔にする、真面目なんですね。
私は自然と笑っていた。
皆は泣きながら笑っていた。
「青団みんなで写真とろーっ」
「お、いいじゃん」
「ちょ、男子、前行きすぎーっ」
「は?!じゃぁ、女子ゆずってやるよ」
「やさしいじゃーん」
「はい、ちーず!」
_パシャッ
この瞬間が、この先ずっと、
皆にとってきっとかけがえのない大切なものになるのだろう。



