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_《 体育祭を開催いたします 》
突然、透き通った声のアナウンスが校舎に響いた。
少し聞いただけで分かる。
…結さんの声だ
《 保護者の皆様が熱中症対策のため、アクエリアスを持ってきてくださりました 》
《 暑さに負けず、体育祭を楽しみましょう! 》
渚先輩は目を閉じて嬉しそうにはにかんでアナウンスを聞いている。
「………」
《 生徒の皆様はこの後、プログラム一番、ラジオ体操です 》
《 元気に頑張りましょう! 》
顔を見なくても笑顔でアナウンスをしている結さんが頭に浮かぶ。
「…ひとつも噛みませんでしたね」
さすが結さん。
渚先輩はゆっくりと階段に座ると、嬉しそうに言った。
「結いっぱい練習してたんだ」
「今年が聞けるの最後だよ、結のアナウンス」
そう言って優しい笑顔を見せる渚先輩。
私も渚先輩の隣に座った。
先輩の横顔を見ながら、一瞬、一瞬を本当に大切にする人だな、と思った。
体育祭で結さんのアナウンスを聞くのがこれで最後で、
体育祭の準備も最後で、
体育祭もこれで最後で、
だから一生懸命、後悔しないように、
なんて私には思いつかない。
どうしてそんなに一生懸命になれるのか、そんなことはもう聞かなくても分かってる。
みんなこうして生きているんだ。
今を後悔しないように。
…先輩、汗だくだ
きっと私を探しに来てくれたのだろう。
先輩にそんなことをさせてしまった自分が情けなくなった。
…走ってまた喘息の発作が出たらどうするつもりだったんですか…
……先輩、ごめんなさい
「私なら、もう大丈夫です」
本当は謝りたいのに、いつもこんな可愛くない言葉しか言えない。
ごめんなさいも、ありがとうも。
「はやく行かないとラジオ体操始まっちゃいますね」
そう言って階段からスッと立ち上がった。