『親がまだ生きていた頃、よく私に向かって言っていました』
『お前なんか死ねばいいって』
『はやく死んでしまえって』
正直、とても衝撃的だった。
追いつかない頭でひとつだけ分かったのは、
この子に生きていてほしい。
そう思ったこと。
『…人の感情なんてよく分からないものばかりですね』
あの時ココさんは冷めた瞳をしてそう呟いた。
だけど今は、ちゃんと光を含んだ瞳をしていることを俺は知ってる。
生徒会に入って、結や海とも仲良くなって、もっと笑顔が増えたよね。
柵の隙間から、ずっと屋上を見つめていたココさんが、やっとこっちを向いてくれた。
俺はあの時のように言った。
「つまらない話でもなんでもいいから、俺に話してごらん、」
「死にたくなくなるくらい」
「呆れるくらい毎日、好きなように生きて、面倒くさくても生きて、」
「命はひとつしかないんだよ」
ココさんの目から大粒の涙が流れた。
ココさんの涙を見たのは、あの時、初めて会った時いらいだ。
「あの時の先輩の言葉が」
「ここに来ると、響いてくるんです」
「…心に」
「柄じゃないでしょう?」
そう言って下手くそに笑うココさんを見て、
…とても綺麗だと思った



