走ると息が苦しくなる。
「はぁっ…はぁっ…ごほっごほっ」
でもそれでも、そばにいたい人がいる。
体と心が矛盾して、走っちゃダメだと怒るココさんの顔が浮かんでいた。
あの怒った顔を見ると、つい笑ってしまう。
笑うとまた怒られるんだけど。
…可愛くて、つい笑ってしまう
「…ごほっごほっ…っ…」
いつもそっけないのに、面倒くさいってすぐ言うのに、
任された仕事は責任を持って全部終わらせるところ。
ツンッてしてて、一人が好きに見えるけど、
本当は不器用なだけ。
そんなココさんのことが、俺は_
「…はぁっ……見つけた…」
俺が立ち止まった場所は、旧校舎の最上階。
屋上へと続いている唯一の階段。
今は封鎖されていて屋上へは行けない。
ココさんはこっちを向かずに、封鎖された柵の隙間から屋上を見つめていた。
俺は息を整えながらゆっくりと近づいた。
そして懐かしい言葉を口にした。
「…死んじゃだめだ」
懐かしいと言ったのは、前にもこの言葉を同じように言ったことがあるからだ。
その日、たまたま最上階にいた俺は、屋上に誰かがいることに気がついて、
そこにいたのが自殺をしようとしているココさんだった。
あの時のことは鮮明に覚えている。
冷たい瞳をしていたけど、その瞳には涙が溜まっていた。
俺の方を見ているのか見ていないのか、無色な瞳でココさんは言ったんだ。