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「なぎさーー」



「渚くん事件だよ!団シャツひとつ足りない!」



「なぎさ!赤団の席変わったってまじ?!」



えーっと…



「いま助けに行くから待ってて」




ゆっくり、



「確か団シャツひとつ職員室にあると思う」




丁寧にひとつづつやれば、



「変わったのは、青団の席とピンク団の席、赤はそのまんまだから大丈夫だよ」




解決するし、息も乱れない。


大事なのは冷静でいること。




「「「なぎさありがとうーーーっ」」」



「はいはい」



頼られるのは嫌いじゃないし、むしろ生徒会長としてたくさん頼ってほしい。




「あ、さっき名前呼んだでしょ、どうしたの?」



「って、結じゃん」



結は不安そうに眉を下げていて、すぐに何かあったのだと察した。




「心花ちゃんがっ…いなくなったってっ」




「……え…」



「教室から飛び出して行っちゃったみたいで、先生も焦っててっ…生徒会なら何か知ってるかって」



「…結、落ち着いて大丈夫」




落ち着いてってそう言ったけど、きっと自分に言い聞かせてるんだと思った。




「先生に伝えられる?」




「心花さんは生徒会長が必ず見つけてくるので、心配いらないですって」




「渚…心当たりあるの?」




心当たりは…




「…ひとつだけ、もしそこにいなくても、…ちゃんと見つける」




呼吸が乱れないように冷静でいなくちゃいけない。



そんなことは分かってる。



いつだってそうしてきたし、なのに、




「結…俺がいない間、」




「わかってるわよ、体育祭は私に任せて」



「これでも副会長よ。心配ないわ」




結はフッと笑って、俺の背中を優しく押してくれた。




なのに、



ココさんのことになると、冷静でなんかいられなくなる。



走り出した足は、ある場所へと向かっていた。



結、ありがとう。