「あっ!あそこに副会長がいる!」
私が渚先輩の名前を口にしようとしたとき、知らない女子の声で消されてしまった。
後ろを振り返ると、階段の下に女子ふたりがいて、嬉しそうに目をキラキラとさせている。
「あら、いつもと髪型が違うのね。とっても可愛いわ。」
「「きゃぁ~~~っ」」
うっ
結さんの言葉を聞いて女子ふたりは叫びながらどこかへ走っていってしまった。
…いったいあの人たちはなんなの
「心花ちゃんごめんね、話の続きだったのに」
結さんはそう言って申し訳なさそうに眉を下げた。
「いえ…」
もうすぐ2階だ。
結さんの教室は2階で私は3階だから、もうすぐお別れだ。
はやく聞かないと…
「教えてください、どんな気持ちなのか」
先輩の目が丸くなって、とても驚いているように見える。
珍しく必死な私に驚いたのかもしれないと思った。
けれど、今はそんなことはどうでもいいと思ってしまった。
結さんの瞳が細くなってフッと大人な笑顔を向けられる。
「…それは、自分にしか分からないわよ」
その瞬間周りの音が消えて、
結さんの言葉だけが、私の耳に深く響いた気がした。
結さんは何かを理解したような瞳をしていた。
そのまま私と結さんは別れて、それぞれの教室へと足を進めたのだった。
「……いじわる」
…分かったなら教えてくれたっていいじゃないですか
「…面倒くさい…」
面倒くさくて、息苦しい。



