あっという間に皆が登校してくる時間になり、私たちはそれぞれの教室に向かうことにした。
「じゃっ、俺はこっちなので!」
「ごめん、先生に用事あるから先に行ってて」
そう言って菅原と渚先輩は私たちに手を振った。
そして結さんと二人っきりになったとたんに、結さんは「う~っ」とうなり始めた。
「……ず~っと我慢してたんだけどね、」
「海くんが今日も可愛いのっ」
…やっぱり始まった
「…そうですか」
「そうなのっ」
「ハチマキずっと探してる時、あぁ、頭についてるなぁって思って…うぅっ可愛ぃ」
「…教えてあげなかったんですね」
「必死で探しているのが可愛いの!教えてあげるわけないじゃないっ」
「…結構ひどいですね」
「…推し…尊い…はぅ…」
こんなに菅原のことを可愛いと連呼するのは、今のところ結さんしかいないと思う。
「……結さんは、」
いつもなら結さんが納得いくまで話を聞いてあげて、それで終わりなのに、
気がついたら声に出していた。
「…急におでこを…こう、コッツンって優しくぶつけられたこと…ありますか」



