「……寝たふりしない」



「…あれ、ばれてました?」



「いつものことでしょ、逆になんでばれないと思ったの?」


「…へへ」


先輩はやれやれと言わんばかりに、眉を下げて困った顔をした。



私は先輩のこの表情を何回も見たことがある。


「ほんとに、この子は…」



そう言いながらも、本当は先輩が怒っていないということを、私は知っている。



放課後のこの時間は、やっぱりなくてはならない存在だな、と改めて感じる。



「…ココさん」



低い落ち着いた声で名前を呼ばれ、私は先輩の方へ視線を向けた。



すると先輩は窓の外を見ていた。



私も視線を窓の外へ向けると、空はすっかり薄暗くなり始めていた。



…あら



そして私はもう一度、山積みになっているプリントを見つめる。


…うん、



「先輩、諦めましょ」



「ココさん、全力で終わらせるよっ」



…やっぱりそうきますよね…



先輩は真面目だ。




渚先輩は、前髪をピンで止めると、ものすごい速さでペンを走らせた。



先輩が前髪を上げるときは、



……本気なとき