渚先輩、好きってなんでしょうか?




「…可愛くて、つい笑っちゃうんだよ」




そんな言葉と一緒に、柔らかい笑顔を向けられた。



ふにゃりと笑う先輩は、なにやら幸せそうだ。



…可愛い



この人はいったい何を言っているのだろう。



…やはり、人間というものは面倒だ



何を考えているのか私には分からない。



「…やっぱり人の感情って、よく分からないものばかりですね」



私はそう言うと、フイッとそっぽを向いた。



「ならこれも…」



先輩の手が私の頬を優しく包む。



そしてだんだんと近づく先輩のおでこが、私のおでこに優しく触れた。



…ん?



「ココさんにとっては、面倒な感情なんだろうな」



_♪



沈黙に似合わない音楽が鳴った。



「あ…ごめん電話」



先輩はそう言って何もなかったように私から離れた。



え、なに。



おでこをくっつけられた…?



…分からない



あぁ、分かった。



私が熱があるかどうか確かめた。



うん、これしかない。



しばらくすると、渚先輩が戻ってきた。



「ごめんね、困ってるらしいから行ってくる」


「ココさんはもう少し休憩してからでいいから」



「体…気をつけてくださいね」



「ありがとう」



まるで何事もなかったかのように先輩はあっけなく立ち去ってしまった。



一人ここに残された私は、いったい何を思えばいいのだろうか。




『ココさんにとっては、めんどくさい感情なんだろうな』




この言葉の謎は、きっと私には解くことができない。



迷宮入りだ。