渚先輩、好きってなんでしょうか?



「……どこにあったんですか」



自分のせいだと勘違いして、こんなに必死に探して、あーぁ、バカみたい



「中庭のベンチの下」



「花宮さんの教室に行ったら、まだクラスメイトが数人残ってて、花宮さんがよく行く場所を聞いたんだ」



…私は…


図書室にいた人のうちの、たった二人に話しかけるのも面倒だった。



「そうですか、じゃぁ私帰ります」



「これ」



私は手に持っているハートのストラップを渚先輩に差し出した。



「先輩が届けてあげてください」



そう言ってハートのストラップを差し出しても受け取ろうとしない先輩。



…なんで


仕方なく、少し強引に先輩の手にストラップを握らせた。



「じゃぁ、」



私が先輩の横を通りすぎようとしたとき、先輩にグッと腕をつかまれたせいで、前に進めなくなってしまった。



ゆっくりと振り返ると、先輩は真剣な顔で私を真っ直ぐ見つめていた。



……なに



「クラスメイトに聞いたとき、初めにみんな口をそろえて言ったのが図書室だった」



…え



「でも、図書室はココさんが探してくれてる」



「頑張ってくれてる、そう思ったから残りの他の場所を探すことができた」




「…ココさんのおかげ、ありがとう」




先輩はそう言って、柔らかい笑顔で笑った。



先輩の首や額にはまだ汗が伝っている。



こんな暑い中、外で走り回ってたんだから当たり前だ。




「それに俺が推理したのは、生徒会メンバーの誰が手紙を読んだか」




「他はただ、探し回ってただけだよ」



先輩はそう言って、面白そうにクスッと笑った。



…ありがとうって…



どうして先輩が言うんだろう。


あのストラップは先輩のものじゃないのに。



でもそんなところも、



「…先輩らしいです」



私も自然と笑顔になっていた。



あまり笑うことのない私だから、先輩は少し目を丸くした。



でもその後、またへにゃりとした優しい笑顔で笑ってくれた。




…じゃぁ私は、意味のないことをしたわけじゃないんですね



そう思ったら少しだけ、ホッとした自分がいた。