教室、廊下、花宮さんが足を運んだ場所はきっとたくさんある。
絶対に図書室にあるとは限らないのだ。
図書室には、いつの間にか私一人だけになっていた。
「……疲れた」
近くの椅子に座ると、ぐでーっと机に身を預けた。
柄じゃないことをして疲れた。
…明日は他の場所を探すか…
“初めて付き合った彼と初めておそろいで買ったハートのストラップです。”
手紙に書かれていた文字が、頭に浮かんでは消えていく。
…もう少し
今日、もう少しだけ探してみよう。
それでまだ見つからなかったら、明日も探そう。
外はもう暗くなり始めている。
私が椅子から立ち上がったとき、図書室のドアがガラガラと音をたてた。
振り返ると、そこには汗だくの渚先輩が立っていた。
「……先輩」
なんでそんなに汗だくなんですか?
そう聞こうとしたとき、渚先輩が先に口を開いた。
「あったっ」
…あった?
無邪気に笑う先輩は、自分の顔の横で何かを揺らした。
「っそれ!」
渚先輩が手に持っているのは、「 I 」とイニシャルが入ったハートのストラップ。
先輩はこっちに歩いてくると、そのストラップを私の手に握らせた。
「…どうして先輩が?」
私がそう問いかけると、先輩は考えるような仕草をした後、ふっとはにかんだ。
「俺の推理勝ちってことかな」
先輩の答えは、余計に私の頭に疑問を浮かばせた。



