菅原に手を振って背中が見えなくなった後、やっと私は自分の帰り道を歩き始めた。
「……はぁ」
1人になると、思わずため息をついてしまう。
どうやら疲れたみたいだ。
…あ、生徒会ボックスの中身…確認するの忘れてた
……明日でいっか
先輩がいない間、私がしっかり見ておかないと。
これが今の、私の役目だと思うから。
_ポツ
「…ん」
空から何かが落ちてきて、顔をあげる。
そしたら顔に雫がポツリと落ちてきた。
……雨
傘は持ってきてない。
次第に雨はザーッという音に変わり、私はずぶ濡れになった。
「………」
走る気にもならなくて、ずぶ濡れのまま歩く。
「わーっ、傘忘れちゃったよー!」
「走ろ!」
どこからか、そんな声が聞こえてくる。
俯きながら地面を見つめて歩く私は、はたから見たらきっとおばけ。
「…つまらない話、聞いてくれないんですか」
「…いつもみたいに…」
なんで今、渚先輩が浮かんだのかは分からないけど、
誰かに私のつまらない話を聞いてほしかった。
私はつまらない人間だから、つまらない話しかできないけれど、
そこには私の傷心や疑問が詰めこまれている。
いつもなんて簡単に崩れていってしまうものなのだ。
このとき、それを改めて知った。



