君はロックなんか聴かない

いっせいに音を出す。なかなかいい世界だ。しかし音楽の中にも不安や緊張を感じる。私自身も。きっとそれはみんなにも伝わっているだろう。私は唾を飲む。みんなの不安そうな視線が集まってくる。私は黙ってうなずくしか出来なかった。
「もう一回やろう」

「うん」「うん」

もう一度音を出す。どうだろうか少しはよくなっただろうか、不安はますばかりだ、本当は私が皆を安心させないといけないはずなのだが気の利いた言葉が思い付かない。

私たちはそんな不安を払拭させる為に何度も何度も曲を引き続けた。そして時間は来た。

「行こうか」

「うん」

みんな口数も減ってくる。
ステージに向かう私たちはこれから人を楽しませせる人のそれとはまるで違った。広角はひきつり目は右往左往。手先は震える。

入り口か出口かそこを抜けると照明とほとんどバンド学生のオーディエンス。直視する事は出来ない。緊張で吐き出しそうだ。手が震えて音量が合わせられない。メンバーを見渡すとみんな余裕はなさそうだ。ふっと呼吸を整えて。まずはボーカルの私が挨拶。
「こんにちはカノンです、えっと、今日が初ライブです、よろしくお願いします」
みんなで決めたバンド名。声が裏返りそうだった。