君はロックなんか聴かない

私は家に帰ってからはひたすら音を作った。花形君話てからずいぶん楽になった。アイデアが溢れてくる。ほとんどがパワーコードだが問題ない。いい曲になりそう。

私はずっとギターを弾いた。こんなに何かに夢中になったのはいつ以来だろうか、こんなにも熱中しこんなにも音楽を愛している。私の初産。早く誰かに聞いて欲しい。きっと素晴らしいもになりそう。自信と不安。不安はだいぶすり切れた。

早く、早く、早く。嗚呼楽しい。

そしてグループにメールを送った。

「曲ができました。聴いてみてください」

既読はすぐには付かなかった。

焦る鼓動。

そして返信がきた。

「凄い!ひめちゃんが作ったの?いい曲だね」えみちゃんからだ、かわいいスタンプもついている。


「いい曲だね、弾けるかな?」青田さんからだ。

「バイト終わったら聴いてみます」白石さんだ。

緊張する。しかし自分の中では上出来だ。とても上手くいったと思う。早く聴いてもらいたい。そしてスタジオで演奏してみたい。

こんな夜は初めてだ、本当は昨日と同じ夜の筈なのにまるで違う世界、窓からみる世界も別次元。私は今日産んだ。いや今日生まれたのだ。エモーショナルに包まれて。外の世界を眺める。