遂に大トリ。会場が色めき立つ。ざわざわと揺れる。プラチナだ。
メンバーがステージに上がるだけで黄色い声援が飛び交う。少し恥ずかしそうに手を振り返す久間君。私は彼のクラスメイト、自慢してやりたい。そんな気分だ。

「こんにちわ、プラチナです。皆さん楽しんでますか?もう少しだけお付き合いください」

学生も多いが後ろの方には大人も混じっている。まさか事務所の人間だろうか、可能性は0では無い。

「では聴いてください、SPEED STAR」

ドラムのカウントと共に始まるギターのイントロ。鋭くカッコいい。おそらく花形君のアイディアだろう、震えるほどの才能だ。羨ましい。先鋭的であり懐メロともとれる心地のいい音楽。コレがきっと売れ筋という奴だろう。誰も傷を付けない美しいメロディー、芸術的な歌声。これが同い年とは思えないおそらく幼い時から血の滲む努力をしてきたのだろう。オーディエンスがみんな吸い込まれている。神を信仰するようにうっとりと真剣に聞き惚れている。ある者は口ずさみ、ある者は手をかざし、ある者は熱い視線を送り各々楽しんでいる。ここが日本で今日で一番熱い空間である事は間違いないだろう。曲が終わると激しい歓声が起こる。拍手の音がうるさいくらいだ。

「ありがとうございました、次の曲です。Rock Queen」

初めて聴く曲だがこれも格が違う。これが才能、完敗だ。

「命は有限無駄にはしない 嗚呼それだけのこと
 幸せを知らなければ不幸になる事はない」

何についての歌詞だろう、私はまだ解らなかった。そしてそのまま終わった。私は勢いに押されたまま唖然としていた。大きな喝采。これが音楽。私の求めている物。もっと大きくならなければもっと努力をしなければ。少し瞳は潤んでいた。

そして結果発表の時がきた。きっとみんな理解していた。レベルが違った。

「入賞はロキです」

起こる拍手。これも妥当だろう。アイナは表情を変えない。

そして

「大賞はプラチナの皆さんです」

また起こる拍手。私も手を叩く。羨ましくはあるが正直レベルが違いすぎて悔しくはなかった。きっとみんな同じ気持ちだろう。

初々しい私のデビュー戦はこうして幕を閉じた。