気怠そうな態度でステージに現れたのは石原アイナだった。あれが彼女の戦闘態勢なのだろ力の入らないその姿には殺気すら感じられる。それを感じているのはきっと私だけではないはずだ。皆圧倒されて彼女に釘付けだ。これが彼女の魅力なのだろう。私は奥歯を噛み締める。
彼女らは挨拶も無く始まる。細い指先から奏でるスラップベース。体の芯に響きわたる。圧倒的なパフォーマンス彼女の肉食動物的な性格がそのまま映し出されたようなメロディーだ。刹那的で破壊的。私は彼女の事は許せないし大嫌いだが、彼女の放つ音楽にはどうしても惹きつけられる物があるのは事実。孤高これがアーティスト、これがミュージシャン、いや違う、これを認めてしまうと私の音楽を否定する事はしたくない。私は目を逸らすことすら許されなかった。何故人は初めて聴く音楽を初めて聴くのにコレが良いと感じてしまうのだろうか此れは恋だろうか私たちとはまるで違う音色に何処か惚れ惚れしていた。
気が付いたら2曲目に入っていた。コレもまたベースが主役。エロい艶っぽい。彼女pは誰の為に弾いているのだろう、きっと誰の為でも無いのだろう多分自分自身の為だけに弾いているだろう、それがきっと魅力なのだろう。悔しいが完敗だ。演奏が終わる。ここでもまた挨拶はない。少し頭を下げただけ、それもそう私には見えただけ頭を下げたわけでは無いのかも知れない。拍手と共にステージを去っていった。