君はロックなんか聴かない

「終わった!」

「うん」

「めっちゃ緊張した!」

「うん」

私たちは皆、冷めない興奮を隠しきれなかった。

「どうだった?」

「私ちょっと間違えちゃった、ゴメン」

「そう?ぜんぜんわからなかったよ」

「そうかな?ならよかったんだけど」

「私まだ手が震えてる」

「私も」

私は冷えた左手をグッと右手で包み込む。まだ小刻みに震えていた。数秒前のことなのにあまり記憶がない。白く淡い記憶。不安と緊張の記憶。それと胸が熱くなる達成感。冷めない熱。火照る。喉が渇いた。
次のバンドの演奏が微かに聞こえる。自販機で炭酸を買って喉に流し込む。少し落ち着く。

「戻る?」

「うん、いや、まだいいや」

私はまだこのエモーショナルな雰囲気を味わっていたかった。あざやかな興奮。同じ趣向を持つ仲間と作り上げる一つの世界。そしてその世界のピースの一つになった私。世界を作るのは戦いでは無く強力なのだこの小さなライブハウスの音楽フェスを成功させる事が大切なのだ。冷えた缶を口にあてては離す。みんなはもう会場に戻ったのだろうか、私もそろそろ戻らないと、アイナのバンド、ロキと久間君と花形君のバンド、プラチナは是が非でも聴きたい。