才能とはなんだろう。

才能とは天賦から与えられた能力。しかし奇しくもそれが自分の望んだ事とは限らない。

それならそんな才能は必要無い。

しかし私達には物事を初めてすぐには得手不得手は分からない。

私達にある小さな才能の火種それを大人は勝手に可能性と呼ぶ。

世界はあまりにも身勝手だ。才能の有無はどれもこれもを手を出さしてみないと分からないと言う事だ。

世界は卑怯だ。もし私に何かの才能があるのならしっかりと最初から始まる前に教えていて欲しい。


私は無駄な時間を過ごしたくない。若さなどあっという間に過ぎ去ってしまう。私達の人生なんて長い歴史の地球にしたら瞬きに等しい。

今までの道これからの道。

私の道は正解なのだろうか。分からない。

私には才能がある。
今はそう信じることしか出来ないのだ。


橋本姫香はそんなことをぼんやりと考えながら外を見つめていた。

暖かい春風が窓の外に流れる。肌で感じなくとも熱は伝わってくる。きっと心地よいはずだ。

花見びらがヒラヒラと舞い散る。校庭の端に咲く桜に視線を奪われる。絶景だ。目を離せない。

何故なら、橋本姫香は教室の風景に戸惑っていた。初めて会う担任。初めて会うクラスメイト。上手くやっていけるだろうか不安になる。

いじめや仲間はずれ人間関係は難しい。

そんなことを考えると教室内をジロジロと眺めるそんな堂々とした勇気は持ち合わせていなかった。

中学が同じで知った顔も何人かいたがそれでも親友とは言えない。話しかけるのほど仲は良くない。小さなため息がこぼれる。これからうまくやっていけるだろうか心配になる。

そんな事をずっと考えてると担任の話は終わっていた。もしかしたら私の第一印象は悪かかったかも知れない。行儀よく話を聞いていたとは言えない。その事を決定付けるのがなにより話の内容はまるで覚えてない事だ。失礼なことをしたな。反省しよう。

1番端の1番前の席の男の子が急に立ち上がった。
「私の名前は青木紀貴です、よろしくお願いします。趣味は野球です、野球部にも入ってます。よろしくお願いします」

パチパチと拍手が起こる。

2番目の人が立ち上がり自己紹介を始める。


驚いた。指示があったのか聞いてなかったが自己紹介が始まったらしい。私は自己紹介が苦手だ。自分の番が来る前にしっかり考えないと。

こういう時に出席番号が遅いことに先祖に感謝したくなる。自分の番が来る前に頭をフル回転して考えなければならない。ここで高校生活の明暗が別れると言っても過言ではない。緊張してきた。

全ては第一印象で決まる。そんな本を何年か前に読んだことがある。その本のせいでこんなに苦しめられるとは思いもしなかった。

徐々に順番が近づいてくる。