『あーもう!佳世に替わりなさいよ!』




そして凌ちゃんは再び叫ぶ。

キーンきたよ、キーン…


そう思いながら携帯を無言で佳世ちゃんに突き出した。




「……え?」



「替われって…」




どうかある耳を指でおさえながらそう言うと、佳世ちゃんは不思議そうにしながらも携帯を受け取った。




「凌?」



『佳世!無事っ!!?謙吾に変なことされてないっ!?』




佳世ちゃんと話しているはずなのに俺にまで聞こえる凌ちゃんの声。

どんだけデカいんだよ…

思わず呆れ顔になってしまった。

佳世ちゃんが話している間、俺は再び熊に目を向けた。

寝転がってゴロゴロしている熊、水浴びをしている熊を見ているとため息が出てしまう。




「いいよなーお前らは…好きな子といつも一緒で」




多少、見当違いな言葉かもしんないけど、口から出たのはこれだった。

再びため息をつきそうになった時、不意にくいくいと袖を引っ張られた。




「はい、携帯。凌の機嫌、治まったよ」




俺が振り向くと、笑顔で携帯を差し出す佳世ちゃんがいた。