「はいはい?」




突然鳴りだした携帯の通話ボタンを押し、耳元に当てる


……途端、耳がキーンとなるような声が聞こえてきた。




『佳世を返しなさいよーっ!!』




思わずバッと携帯を遠ざけてしまった。

それほどその声は大きかったわけで。

少し痛む耳をおさえながら、俺はさっきと反対の耳に携帯を当てて口を開いた。




「し、凌ちゃん……」



『あんたね、佳世をどこにやったのよ!!!!』



「凌ちゃん落ちついて…」




少し苦笑いしながら言うんだけど、凌ちゃんの機嫌は一向によくならない。

困り果てて隣を見ると、少し首を傾げた佳世ちゃんがこちらを見ていた。




「凌……?」




こくっと頷くと、佳世ちゃんは目をぱちくりとさせる。




「なにか、怒って、る?」



「あー、いや、んー…」



『は!!!?いやって何っ!?』




佳世ちゃんに対する相づちも、凌ちゃんをさらに怒らせる原因みたいだ。