そんなこんなで、自分でも調子に乗ってるのはわかったんだけど。

つい、口から自意識過剰な言葉が飛び出した。




「佳世ちゃん、俺のこと好き、とか?」



『…………』




聞いた途端、電話の向こうで“ガタッ”と音がした。

多分……携帯を落とした音。




「佳世ちゃん?」



『……っ、ばか!』




のんきに俺が声をかけると、動揺したような声がして次の瞬間には電話から“ツーツー”としか聞こなくなっていた。




「切られちゃった」



「ざまあみろ」




機械音がしだした携帯を耳から離すと、ずっと静かにしていたえのチャンが口を開いた。




「ねえ、えのちゃん」



「あ?なに」




俺に返事をしながら、えのチャンはタバコに火をつける。

タバコの匂いが嫌いな俺は、しかめ面をしながら少しだけえのチャンから離れた。




「もし、好きな子が脈ありかもって思ったらどうする?」



「んなもん……」




えのチャンが息を吐くと白い煙が上へ立ち上っていく。

俺はそれを目で追いながらえのチャンの答えを待つ。

そしてえのチャンはチラリと俺を見て口を開いた。




「ヤるしかねえだろ」




えのチャンらしい答えに、俺はガクッと肩を落とした。